絵画に囲まれスタンウェイを弾く機会を逃したくない
バッハ パルティータ1番のプレリュードとアルマンドをコンクールに向けて練習するだけで手がいっぱいのはずなのに、シューマンのアラベスクにまで手をつけようとしていることまでは記事にした。
そして忘れていたのではないが、このハナシには続きがあって、
「12月にはピティナステップがあるから、今度はフリーでシューマンのアラベスクを弾いてみたら?」
と先生から勧められたのである。
もしこのピティナステップの会場が、今までに弾いたことのあるホールであれば、
「いや、今回はちょっと・・・」
と躊躇、あるいは遠慮したであろう。
しかし先生がすすめてくださるピティナステップの会場は、「世良美術館」という個人美術館なのである。
前から弾いてみたいと思っていたサロンのような空間で、たくさんの絵画に囲まれながら、スタンウェイB型を弾く!
ああ!こんな機会を逃すなんてもったいなすぎる!
大正~昭和初期の豪邸が今も残る阪急御影界隈
世良美術館は阪急御影から徒歩数分のところにある小さな美術館である。
そしてこの阪急御影という界隈、今でこそマンションの数が多くなってしまったが、大正~昭和初期に富を築いた豪商の邸宅が今も残る、レトロな高級住宅地なのだ。
わたしがぱっと思いつくだけでも、朝日新聞社社主の村山邸、武田薬品の、今は資料館となっているチューダー様式洋館の武田邸、乾汽船の設立者の旧乾邸などがある。
このうち、旧乾邸は2007年のTVドラマ「華麗なる一族」のモデルにもなったらしいし、旧武田邸は私の記憶によれば、NHK銀河ドラマ「冬の虹」(藤竜也主演)のモデルになっている。
子どもの頃、このお屋敷街の細い道を歩くときは、どんな人が住んでいるのだろう、と興味津々だったが誰にもすれ違ったことがなかった・・・
世良美術館の設立者、世良臣絵さんについて
世良美術館の設立者、世良臣絵さんのご経歴を調べてみて驚いた。
まるで絵にかいたようなお生まれのお嬢様なのである。
1911年に東京麻布で生を受けたが、3歳でピアノをはじめ、東洋英和を卒業後、結婚を機に神戸に移り住んだらしい。
結婚後はピアノ教師をしていたが、絵画に才能を発揮し、あの小磯良平に師事。
ヨーロッパを遊学しながら帰国後は個展を開催、絵画展に数多く入選。
念願の美術館を開館したあと、2009年に98歳で永眠。
こう書けばずっと順風満帆に聞こえるが、神戸大空襲を経験したり、疎開した広島で被爆したりと、光も影も経験された中身の濃い人生を送られた方のようだ。
でも銀のスプーンをくわえて生まれてきたかのようなお育ちで、音楽や絵画にも才能があったとはうらやましくて仕方がない。
どうして天は同じひとに二物も三物も与えるのかね!
世良美術館のレンタルスペース
ところでこの世良美術館、コンサートに使う1Fとは別に、2FにもスタンウェイB型があり、友の会会員になれば30分1500円でレンタルできるそうだ。
ウーン、こちらにも誘惑されるなぁ。
しかし会員になるための入会金と年会費がある。
ああ、やっぱり趣味のピアノっておカネがかかるなぁ。