私のあとに体験レッスンがはいった!
そう言えば、このごろジャズピアノレッスンで顔をあわせていた私のあとの時間の人の姿を見かけない。
ひょっとしてもう辞められたのか?
それでいつも私のレッスン時間を超過するわけだ!
私としては長い時間みてもらってトクをしているわけだが、教室側としてはそうはいくまい。
先日は私のあとの時間に体験レッスンのかたがお見えになった。
その日、レッスン時間後半になると師はいつになくそわそわとしだし、
「きょう体験やねん」
とつぶやいた。
そして時間になると
「うわっ!」と声を上げてレッスン室のドアをあけ、丁重に、
「〇〇さんですね? どうぞ!」
と待ち人に入室を促した。
はいってきたのは、いたって普通の服装の熟年女性、そしてあとからはいってきたのが、どこからみてもおっさん!の男性!!
いったい、このおっさんは何者なのか?
体験レッスンにあらわれた熟年夫婦
このおっさんは私がそそくさと荷物をまとめ、師に挨拶をし、退室するまでを、じろじろと見ていた。
私は気のせいではないか、と思い込もうとし、このぶしつけな視線を忘れようとしたが、家に帰ってからも妙にフラッシュバックした。
そうだ、やっぱりとってもイヤな感じだったのだ!
なんで私のことをそんなにジロジロ見るねん!
次回、レッスンにいったとき、私は師に、
「このあいだの体験のかたってはいるんですか?」
と聞いてみた。
「ああ、あの人な、最初入るゆうててんけど、あとになって『やっぱりやめます』ゆうて連絡があったわ」
「それであの男の人は?」
「あの人の旦那や。嫁はんの習い事についてくるって変わっとうやろ。
なんかややこしそうな人やったから、はいらへんて聞いて、ホッとしたわ」
妻(夫)の習い事に夫(妻)がついてくる
子どもの習い事に親が付き添うのは普通にあるパターンだが、妻(夫)の習い事に夫(妻)がついてくるというのは聞いたことも見たこともなかった。
「ひぇー! 仲いいんですね!」
と私は言った。
だって私のピアノレッスンに夫ちゃんがついてくるなんて考えられない。
私が懇願したとしても、彼は
「どうして僕が行かないといけないの?」
と言うだろう。
私のほうも彼に一緒に来てほしいという発想は1ミリもない。
ひょっとして私たちは仲が悪いのか?
あるいはピアノの先生が男性だから、かのご婦人は
「男の人やからなんか心配やわ。お父さん、いっしょに来て!」
と頼んだのだろうか?
それとも夫のほうが、
「ピアノの先生が男やなんて、変な奴だったらどうしよう。
ここはワシがついていって検分してやる!」
と男気をだしたのだろうか?
どっちでもいいけれど、それにしても、なんであのオッサンは私のことをじろじろ上から下まで舐めるように見たのだろう?
「たぶん、どんな人が習いに来てるのか、みたかったんちゃう?」
と師は言うのだが・・・
なんか腑に落ちない。
「ややこしそうな人」を教える側は断れるのか?
師はこの夫婦のことを「ややこしそうな人」と言ったきり、タメ息をつき、多くを語ろうとしなかった。
私はどういう風に「ややこしそうな」のか、もっと聞きたかったのだが、
「このへんの教室で、体験やってるところをまわってるんやろ」
としか師は答えなかった。
「なんか長唄もやってる、ゆうてたなぁ」
長唄とジャズピアノ!!
変わった取り合わせだが、興味のあることにチャレンジしたいというのであれば、何でもよかろう。
しかし、百歩譲って本当に「ややこしい」ひとであれば、教室側というか教える側は、入会を拒否できるのだろうか?
多分むずかしいやろね。
体験レッスンのあとで、習う側が入会を断るのは当たり前だけれども、教える側が断るなんて聞いたこともない。
そう考えると、教える側も大変やね。
先生、本当にお疲れ様です。