家を買ったことのある人なら苦笑いかも
今月NHK BS2で放映されていた映画「マネー・ピット」が製作されたのは、主演のトム・ハンクスが30歳のときらしい。
1986年といえば、日本のバブル最盛期。
そしてトム・ハンクスは私と同じ生年だから、かの大俳優も、この頃は細身の若手俳優だったのだ。
そしてこの映画は笑えるドタバタ喜劇である。
私も大いに笑った。
しかし、精一杯背伸びをして家を建てた人・買った人がこのドタバタ映画をみると、笑いながらも身につまされて、だんだん苦笑いになってきたのではないかと想像する。
なぜなら私たちもそのグループにはいり、全財産をつぎこんで建てた家が期待どおりにできているかどうか、それこそ入居したてのころは疑心暗鬼だったのだ。
だって家って一生の買い物でしょう?
豪邸の想像を絶する欠陥ぶり
映画「マネー・ピット」のあらすじをかいつまんで書くと
弁護士のウォルター(トム・ハンクス)は恋人アンナの元夫でオーケストラ指揮者マックスのヨーロッパ遠征中を利用して、彼の所有アパートで同棲中。ところがマックスが急遽帰国することになり、二人は至急自分たちの住まいを見つけなければならなくなった。そんななか、100万ドル以上はする豪邸が20万ドルの格安で売りに出されていることを知る。豪邸に一目ぼれした彼らは有金はたいて購入し住み始めるが、豪邸は想像を絶した欠陥住宅だった・・・
もちろんドタバタ喜劇ゆえ、その欠陥ぶりは尋常ではない。
- ドアをノックすればドアが倒れる。
- バスタブの蛇口をひねれば、真っ黒な水がでる。
- 天井の漆喰が剥がれ落ちる
- 2階に通じる階段が全壊する
- コンロから発火し全部のケーブルを伝わってキッチンが火事になる。
そのたびごとに観ている私たちは腹を抱えて大笑いすることになるのだが、新築住宅に入居直後は床や壁のちょっとしたキズにも神経質になり、大騒ぎしたことを思い出すと、だんだん引きつった笑いになってくるのだ。
笑えるセリフも満載の映画
だいたいドタバタ喜劇というものは、アクションばかりに気を取られ、セリフには気がまわらないものだが、この「マネー・ピット」には笑えるセリフが多かった。
たとえばオーケストラ指揮者のマックス。
演じているのはアレクサンドル・ゴドゥノフという、元ロシアのバレエダンサー。
指揮ぶりもなかなか堂に入っている。
こいつは団員から恐れられていてイヤミなことをいう男で、リハーサルのあと、
「組合で決められているから君たちにはランチの時間を与えてやる。しかし少しでも良心のあるものなら食事は喉を通らないだろう」
また元妻のアンナとよりを戻そうとしきりに
「I love you」を繰り返すが、アンナは
「You love you, and I love Walter! (あなたが愛しているのは自分、そして私はウォルターを愛してるの!」と切り返す。
一方、改修工事を依頼したウォルターだが、工事はどれくらいの期間かかるかと業者に聞いたところ、業者は、
「Two weeks !」と言う。
そのあまりの短さに、ウォルターは「Two weeks ! Two weeks !」と繰り返す。
すると業者は「あんた、オウムになったんか?」
うん、このジョークは使える機会がありそうだ。
第九「歓喜の歌」のウェディングシーン
そして欠陥住宅の改修工事が終わり、ラストのウェディングシーン。
アンナの元夫がタクトを振り、演奏されるのはベートーヴェンの第九「歓喜の歌」。
私たち日本人にとって、この曲は師走をイメージしやすいものだが、なに、別に結婚式に使われてもいいわけだ。
なんといっても「歓喜の歌」なのだから。