「Ricado Bossa Nova」をソロで弾くための秘策
話を脱線させてしまったので、元へ戻そう。
私が大人のピアノコンクールで「Ricado Bossa Nova」というラテンナンバーをやりたいといったので、師は考えあぐねているようだった。
もちろんトリオ以上の人数構成でやるのなら、師も躊躇しないだろうが、なにぶんにもソロでラテンだ。
あちらこちらでほころびがでてきそうだ。
しかし私の意志を尊重し、かつ弾く機会が一応コンクールということだったら、こういうのがいいのではないか、とアドバイスをいただいた。
2の「かます」については、関西では素行よろしくないお兄さんたちが、「こいつ一発かましたろか」などということから来ているのかもしれない。
しかし師が意図しているのは、最初に聴衆を驚かせる音を出すことを意味しているようだ。
なぜなら師はいきなり、ラフマニノフかチャイコフスキーのコンチェルトかを思わせるような和音を爆音で鳴らし、あとをテキトーなアルペジオの嵐を鍵盤上に巻き起こしたからである。
「どや、びっくりしたやろ。
ドーン!といくのも大事やねんで」
師はニッと微笑みながら言うのである。
「Ricado Bossa Nova」とはどういう曲か?
また話が前後してしまったが、私がやりたいと言っている「Ricado Bossa Nova」とはどういう曲か?
Wikiによると、以下のような説明がなされている。
リカード・ボサノヴァ は、ポルトガル語題 Recado, 英語題 Recado Bossa Nova または、The Gift で、ブラジルのジャルマ・フェヘイラ(Djalma Ferreira)が1959年に作曲したボサノヴァの曲で、ジャズのスタンダードナンバーとしても有名である。
さらに説明を補足すると、日本のジャズシーンで大ヒットしたのは1965年ごろ。
のちに↓のようにたばこのCM曲としても使われ、
日本人では、南佳孝さんがレコーディングしている。
ベースラインの練習は必須
しかし私が「Ricado Bossa Nova」でやりたいのは、しっとり系のボサノバなのだ。
すると師はそのように弾いてくれ、
「こういうふうにセーブしたのはな、お客さんがわかってくれるかどうかなんや。
おとなしいなかに秘めている情熱をやな。」
しかし私の場合、まずその内に秘めたる情熱を表現できるかどうかが第一関門なのだが。
いずれにしろ、ソロで弾く場合、ベース音とパーカッション部分を左手が受け持たなければならない。
師はタータ タン タータ タン というリズムを繰り返しながら、微妙に経過音も使いながら多彩なベースラインに仕上げていく。
「これもうるさないようにな。
なんか底辺でうごめいてるな、ぐらいがちょうどええねん」
私はすっかり考え込んでしまった。
「かます」のも「刺激的なテンポ」も難しいが、まずこのベースラインから練習する必要がありそうだ。
「まぁ、以上提案や。 あとは自分で考えてや!」
師は楽しそうにカラカラと笑うのだった。