夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

サンバに悲しみがあることを教えてくれた映画「男と女」

1966年のフランス映画「男と女」(原題:Un homme et une femme)

好きなことだとついしゃべりすぎてしまう

先日のレッスンで、おそるおそる「発表会に弾く曲をもう一曲、増やしてもいいでしょうか?」と先生にお尋ねしたとき、先生は何かを書く作業をしていたと思う。

何かにかがみこんだまま、作業を続けていた先生は、

「いいですよ~ どんどん弾いてください!」

というので、私はドビュッシーの夢想と、ナザレーのオデオンと記入した申込用紙を提出したのだ。

ところが先生からはあとになって

オデオンってどんな曲?」

と聞かれた。

ひょっとしてそうではないか、と思ったのだが、純クラシック派の先生は、民族音楽にクラシックのエッセンスをちょろりと垂らしたような、ナザレーという作曲家をご存じなかったのだ。

私はそのとき、

「19世紀後半から20世紀初めに人気があった、ブラジルの作曲家兼ピアニストです」

とだけ答えておいた。

今にして思えば、そこでやめておけばよかったのに、と思う。

このあと私はどういうわけか、ブラジルの音楽と映画男と女」についてしゃべりすぎ、「あー、またやってしもた」と反省することになるのだ。

先生はそんな話聞きたくもなかったかもしれないし、うんちく好きなおばさんと思われたのではないだろうか。

ブラジルは明るいだけの国なのか

先生のお知り合いにブラジルを訪れたかたがいて、そのかたによると、

「ブラジルのひとってほんと何にも心配していないし、何も考えていないみたいで、あそこに住むとバカになりそう」

ということらしい。

え?そうだろうか?

私の好きなボサノヴァには哀感がみちみちているし、古くからのブラジルの民族音楽ショーロには顔は笑ってこころで泣いているような曲もあると思うが?

そこで私は(よせばいいのに)、

「フランス映画の『男と女』では、ダバダバダ~で知られるフランシス・レイの曲だけではなくて『男と女のサンバ Samba Saravah』というとてもいいサンバがでてきます。

それによると悲しみのないサンバはサンバじゃないそうです。」

なぁんて言ってしまったよ。

悲しくないサンバなんて酔わないワインだ

問題のサンバ、「男と女のサンバ Samba Saravah)はアンヌ(アヌーク・エーメ)がジャン・ルイジャン=ルイ・トランティニャン)の車のなかで、事故でなくなったスタントマンの元夫の思い出話をするところででてくる。

歌は元夫役のピエール・バルーによるもの。

もともとあった「祝福のサンバ」という曲にバルーがフランス語の歌詞をつけたらしい。

Être heureux, c’est plus ou moins ce qu’on cherche
J’aime rire, chanter et je n’empêche
Pas les gens qui sont bien d’être joyeux
Pourtant s’il est une samba sans tristesse
C’est un vin qui ne donne pas l’ivresse
Un vin qui ne donne pas l’ivresse, non
Ce n’est pas la samba que je veux

幸せであること、

それは人間であれば多かれ少なかれ、みんなが求めること
僕は笑い、歌うのが好きだから、楽しんでいる人々のじゃまはしない。
でも悲しくないサンバなら、それは酔わせないワインだ、そう
それは僕が望むサンバじゃない

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フランシス・レイによる不滅の名曲「男と女」

映画「男と女」は「ダバダバダ ダバダバダ」というスキャットが印象的なテーマ曲のせいで、公開当時子どもだった私でも知っていた。

同時にその作曲家、フランシス・レイの名は世界中にとどろき、以後80年代ぐらいまでは飛ぶ鳥をおとす勢いでヒット曲を連発したと思う。

しかし私がこの映画を観たのはずっと大人になってからで、もう「ダバダバダ ダバダバダ」には飽き飽きしていた。

そのせいか、彼の作品ではないこのサンバのメロディー、歌詞ともに心を奪われたのだった。

でもせっかくだからダバダバダ ダバダバダ」も貼っておこうね。

いい曲であることには変わりないし、アヌーク・エーメの、今風に言えば神レベルの美しさを、ひとりでも多くのひとに知ってほしいから。

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