わざわざスタンウェイを弾きに行った理由
「弘法筆を選ばず」ではもちろんないが、私はピアノについて、「〇〇〇でないといけない」という信念はない。違いがわかるピアノ学習者でないからだ。どういう弾き方をしても同じに聞こえる電子ピアノでなければ、ヤマハでもカワイでもよいのだが、一度スタンウェイなるものを弾いてみたいな、と思っていた。
なんとなれば、クラシックピアノ先生宅にも、ジャズピアノスタジオにもスタンウェイは置かれていないからである。
それで一時間¥2,200円を払って神戸元町にあるピアノスタジオまで弾きに行くことにした。
ヴィンテージなスタンウェイは素晴らしいか?
このスタジオに置いてあるスタンウェイはモデルLという型で1930年代に製造されたヴィンテージらしい。
1930年代? 華麗なるギャツビー? スコット・フィツジェラルド? スィングジャズ? 大恐慌?
何かにつけ、古びたものに心惹かれる私はそれだけでうっとりする。
まず、外観からして私好みだ。ステキな木目調なのだ。
そして、音は、音はですねーー。中音域はちょっとこもったような音色で霧がかかったようにミステリアス。高音部はヤマハと同じくらい、明るい晴れた音色だ。もうちょっと曇っていてもいいかな?
まぁ、私にはミシュランの三ツ星の価値がわからないのと同じで、ピアノも詳しいことはわからないのだ。とにかく、気に入った。
また来るからね、スタンウェイちゃん!
ピアノスタジオとその立地に満足
ピアノスタジオもとても気に入った。まず清潔。トイレも。これ、とっても大事。
ピアノを置いた個室は他にもいくつかあって、メトロノームや楽譜や、スマホスタンドなどの備品もある。
小さいテーブルと椅子も各所にあって、予約時間の前後はそこでボーっとできる。
スタッフの方の対応もよい。きょう会った受付の男性も、備品の整理をしていた女性も、礼儀正しくかつフレンドリーだった。
立地はJR元町駅から数分だから、元町商店街や大丸をウィンドーショッピングできるのもいい。三宮方向に歩いて、「マリアージュ・フレール」でおいしい紅茶をいただきながら、久しぶりにタルトタタンはどうかな?
いや、せっかく元町に来たのなら、今度はぜったい「別館牡丹園」でパリパリの春巻きを食べたい。妄想は果てしなくふくらみ、「別にバカンスに行かなくてもけっこう楽しいことあるやん?」と負け惜しみじみたことを考える。
ここまでくると、最初のピアノの練習という大義名分をほとんど忘れかけている。