「アナクルーシス」を初めて聞いた
私が初めて「アナクルーシス」という音楽用語を知ったのは、今のクラシックピアノの先生での2回目のレッスンのときのことである。
そのとき、「毎日の練習12か月・1~うたう指づくり」というテキストにしたがって、私の弾き方全般について先生のご指導を仰いでいたのだが、ちょうど下の楽譜の1小節目のところ、16分音符の前のところで、
「ここは『アナクルーシス』ですね。ですから準備をしてから音を出さなくてはなりません」
と先生が言った。
「アナクルーシス」なる言葉は初耳だったので、私は
「え?」と聞き返したが、先生は、
「『せぇーの!』みたいなものです。テニスでも野球でも、ボールを打つときにいったん後ろに引いて、準備するでしょ?あれと似たようなものです。」
スポーツを例に出されて、私は「なるほど!」というくらい、合点がいった。
とすると、不思議に最近は聞かない気がするが、よく野球のラジオ実況中継で、
「ピッチャー振りかぶって・・・第1球、投げました!!」というのがあったが、その振りかぶって、にあたるのではないか?
アナクルーシスのときはどう弾くのか
ここで具体的にどう弾けばよいのか、というと、まずこの場合は右手だから、
- 右手をやおら上空15センチのところまで持ち上げる
- ふんわりと、まるで天女が舞い降りたように右手を鍵盤まで降ろす
- 鍵盤を押す
という一連の動作に集約されるように思う。
シフ大先生のバッハにその例をみたと思う
ことばであれこれ言ってもわからないから、具体的にどういう動作かというと、ちょうどシフのバッハ フランス組曲5番のYouTubeの動画を見ているときに、「これだ!」と思うのがあったので、貼っておく。
尚、これはあくまで先生がおっしゃった動作とこの動作が似ているというだけのハナシで、シフ大先生のこの動作がアナクルーシスを示している、と言っているのではない。
そんなことは素人の私にはわからん。
問題(?)の箇所は冒頭の0:05のところである。
シフ大先生が弱起にあたるシを弾く前に、実に優雅に右手を上げ降ろしされるのがわかると思う。
ジャズピアノでは禁断の『おばけ』
私にとって大問題なのは、ジャズピアノの先生が、
「こういう弾き方な、ジャズの世界では『おばけ』ゆうねん。手が『うらめしや~』になってるやろ。こういう弾き方はジャズには向いてへん。スピードが遅くなるからな」
と言い、
「ゆめこちゃんは、ときどき『おばけ』になるな。クラシックピアノのクセかな。これはジャズをやろうと思うんやったら、やめなあかんな」
とも言っていた。
はい、もしこの弾き方がジャズには向いていない、というのであれば、ジャズのときはこういう弾き方にならないように極力気をつけます、というところであろう。
しかし、そうであればジャズでは「せぇーの!」は要らないことになる。
「せぇーの!」なしで、いつエネルギーを瞬発させればいいのだろう??
どう考えても、ボールを投げるときはいったん後ろに腕を引かねば投げられないだろうし、およそラケットを使うものはテニスでもバトミントンでも卓球でも、スマッシュのときは後ろに引くよね? しらんけど。
このときから私はずっと「アナクルーシス=せぇーの!」について考え続けている。