バッハ フランス組曲5番クーラントに費やした時間
コンクールの準備前に中途半端曲を一掃しよう!というキャンペーン(?)のもと、どさくさに紛れて合格をいただいたバッハ フランス組曲第5番クーラントに関する記事である。
この曲はショパンのプレリュード4番と違って毎日欠かさず練習していた。
このブログをさかのぼってみるとだいたい5月上旬から練習を始めている。
ということは3か月半=105日。
毎日この曲のために20分を割いたとしても2100分=35時間?
私の計算はあっているのか?
としたらかなりショックだ!
35時間かけてもほとんど上達せず、縦と横がビシッと揃っていない現実に向きあうのは辛いものがあるなぁ。
17世紀の女性に♩=120のダンスができるわけない
しかしレッスンに行ったとき、先生は私を慰めるかのような持論を展開してくれた。
つまりバッハの時代、女性たちは長いスカートの下にペチコートを重ね、ウェストはコルセットで締め付けていたはずである。
そんな動きにくい服装で、♩=120のダンスができるわけないでしょ、というものである。
そういわれてみればそんな気もするが、バッハのクーラントは舞踊曲の形式だけを踏んでいるのであって、楽曲のテンポ=ダンスのテンポとは限らない、という説もどこかで読んだ。
それにしてもバッハが実際に弾いていたテンポはどんなのだっただろう?
そして私も「そうですよね!」と先生の説に同意を示したが、本音は♩=120ぐらいで軽々、さらさらっと弾きたいのだ。
でも先生は
「♩=120で踊ったらフレンチ・カンカンになってしまうわよ!」
といって私を笑わせてくれた。
本当にバッハのクーラントのリズムにのせて、淑女たちがスカートをまくり上げ、脚を高く上げてくれたら面白いだろうにね!
【自撮り動画】バッハ フランス組曲5番クーラント
下の動画はレッスンに行く前に撮ったものでテンポをメトロノームにあわせてみたら
♩=98-100ぐらいか?
出来はよろしくない。
たまたま、ではなくいつもこんなものなのだ。
10回くらいやり直したが、いつもどこかのパートできわめてよろしくない部分が露見してしまう。
しかしきのうのレッスンでは、先生はメトロノームを♩=82にセットし、
「これにあわせてみて!」
と言った。
♩=82であればさすがに大きく崩れることはない。
弾いている本人はまったく面白くないのだが。
「じゃ、これも終わりにしましょ!」
と先生は言った。
きっと先生も、聞いていて面白くも何ともなかったに違いない。
クーラントのフランス語語源に苦笑する
家に帰ってからガッカリしながら電子辞書のプチ・ロワイヤル仏和辞典でcouranteをひいてみた。
すると音楽用語としてのクーラントは2番目の意味で、17世紀フランスで流行した3拍子の舞曲、とあるが一番最初の意味は俗語マークがあり、avoir la courante で「下痢をしている」と書いてあった。
私はこれをまったく知らなかった。
面白がってフランス語ネイティブである夫ちゃんに
「本当にこの表現、使うの?」と聞いたら
「古すぎて使ったことないよ、なんか60年代っぽい」
と言う。
彼の世代では avoir la chiasse というらしい。
「でも僕の世代までで、今の若い人はどういっているか知らないよ!」
やれやれ、50年たてば言葉も変わるのなら、400年以上のダンスのテンポなんかわからないほうが当たり前なのでは?
よけいなことは考えず、ひたすら練習に励んだほうが賢明そうである。