体験レッスンはいつからはじまったか?
ところで体験レッスンっていつからはじまったのだろう?
私が子どもの頃は断じてなかった習わしである。
おとなになってから大学2年のとき、ヤマハのジャズピアノコースに入会したが、そのときも体験レッスンなんてなかった。
いきなり「きょうからお世話になります。よろしくお願いします」
だったと思う。
今から思うとソラ恐ろしい。
どんな先生か会ったこともないのに、個人レッスンの場合、密室で1対1で30分以上は過ごすのだ。
もちろん体験レッスンですべてがわかるわけではないのだが(実際、私は大失敗をしている)、それでもないよりずっとましである。
先生が語ってくれた忘れられないこと
結局、私が音楽教室で受けた無料体験レッスンは2件とも断ることになってしまったのだが、先生があわなかったとか、先生の指導方針に疑問を感じたということではまったくない。
それどころか、指の練習を重視する最初に会った先生は、今も忘れられないことを教えてくれた。
実際に習うとなれば、ハノンばかりをやらされて辟易するかもしれないが。
その1
コンクールはね、(演奏の)最初がかんじんなの。ほとんど最初で決まっちゃうようなものなのよ。
その2
あなたがバッハの楽譜全部に指番号を振っているのはとてもいいことだと思うわ。
バッハはね、指番号が正しければ弾けちゃうのよ。
その3
2回目のコンクールの点が1回目より悪かったというのはね。最初に比べればいろいろ考えすぎたせいなのよ。そんなことより、あなた自身がどう弾きたいか、というのが伝わればいいのよ。それが審査員の気に入らなければしょうがない。諦めるしかないわね。
またこの先生は、
「大学のときあまりにバッハを厳しくやらされたせいで、バッハと聞いただけで胸がキュッと詰まる気がするの。なのに最近の大人はどうしてバッハをやりたがるのかしらね。特に理系の男の人!」
と本音全開でまことに面白かった。
私が体験レッスンで聞きたかったこと
私が体験レッスンで聞きたかったのは、「ここをpで、もっと歌うように!」とか「ここをクレッシェンドして!」とかではなく、その先生がどういう音楽観をもっていて、その上で私にはどういう練習法が効果的だと思うか、ということだった。
現代ではあらゆる情報があふれているから、その気になればYouTubeでも、ピアノの先生が書いているブログでも、有益な情報を知ることができる。
でも肝心なのは、そのひとたちは私を知らない、ということなのだ。
そのひとたちは、私がどういう姿勢で弾いていて、どういう音をだして、どういう指、腕、手首の使い方をするか知らない。
また今までにどういうことを習ってきたかも知らない。
だから私が求めているのは、私の演奏を実際に(動画ではなく)聴いたプロのかたからの助言なのである。
だから今まで習ってきた先生の観点とは違う観点からの意見が聞ける、体験レッスンはとてもためになったのだ。
人生でたぶん初めて「お祈りメール」を書いた
これまでの転職活動で「お祈りメール」は数えきれないくらいもらったが、実際に自分が書いて送った記憶はない。
たぶんこれが初めてではないだろうか。
お祈りメールをもらっていた頃は、「これを送るほうはたぶん気持ちいいんだろうな」と想像していたが、実際に自分が文面を推敲していると、胸が痛んだ。
「先生、先生が悪いのとちゃいますの。
お月謝とかレッスン時間とか、その他もろもろのせいですの」
と言い訳をするように書いたのがだいたいこんな感じである。
1月○○日に体験レッスンに参加させていただきました、ねむいゆめこです。
その際には大変お世話になりました。
貴教室ではみなさん大変親切で、特に先生には貴重なアドバイスをいただき、よい経験になりました。しかしながら、今後定期的にレッスンに通うとなるとかならずしも私の利便性にかなった選択ではないため、今回は入会を見送らせていただくことにいたしました。
誠に心苦しいのですが、ご理解いただけると幸いです。
今後の貴教室の益々の発展をお祈りしております。ありがとうございました。
スタッフのかたは別として、これを先生が読んだかどうかはわからないが、お祈りメールを受け取った昔の私のように、「ケッ!!」と呟き、すぐさまゴミ箱に放り込んでほしいものだ。