「シェルブールの雨傘」のテーマについて書いていなかった
私の住む近畿地方でもきょうから梅雨入りとなったらしい。
それをいいことに「シェルブールの雨傘」の続きをまたまた書いているが、そのわけは「カサールの語り(Récit de Cassard=Watch what happens」について書いておきながら、それよりはずっと知名度の高い、いわばこの映画のテーマソングともいえる「あなたなしでは生きていけない(Je ne pourrai jamais vivre sans toi)=I will wait for you」について書かないのは、ちょっと片手落ちかなと思ったのだ。
「シェルブールの雨傘」でいちばん有名なシーン
「あなたなしでは生きていけない」が歌われる、たぶん映画中でいちばん有名なシーンは↓の場面。
この映画の背景にあるのはアルジェリア戦争(1952-1964)。
召集令状を受け取り「これから2年の兵役につかねばならない、だから結婚はまだあとになるが、キミを死ぬまで愛している」というギィ。
それに対して「あなたに会えないのなら死んでしまう。行かないで」と答えるジュヌヴィエーヴ。
それにしても、Je ne pourrai jamais vivre sans toi(あなたなしでは生きていけない)とはすごいセリフだなぁ。
フランス語初級者だった頃、この映画の対訳本を買って全部暗記するつもりだったことがあるが、このセリフだけはたぶん一生使うことはないだろうと思った。
だって日本人だったら言われたほうもひいてしまうやん。
だから英語タイトルの「I will wait for you」のほうが、英語学習者にとっては使用頻度が高いと思われるが、これはこれで、待ち合わせの相手を待っているみたいでロマンに欠ける。
なんかぴったりでもっと気の利いたセリフはないものか。
ミシェル・ルグランによる超絶技巧「シェルブールの雨傘」
不思議なことに、このテーマソングはジャズメンにはあまり使われてはいない。
あるにはあるけれど。
映画がヒットしすぎて悲恋のイメージが強すぎるからか、それともコード進行が単純すぎてジャズメンの興味を引きにくいのか、それはちょっとわからない。
だからここでは作曲者のミシェル・ルグランの超絶技巧でお聞きいただこう。
ミシェル・ルグランはパリ国立高等音楽院で学び、在学中から数々のクラシックピアノの賞を受賞したらしい。
しかしのちにジャズに転向。
この点、羽田健太郎さんとよく似ているね。
ジャズピアニストとして活動しながら、数々の映画音楽の作曲も手掛けているから、どっちが本職なんだろう。
↓の動画では、まずオリジナルのスローから始まって
1:38 アップテンポの4ビート
3:25 アップテンポのワルツ
5:27 ボサノバ
6:40 タンゴ
7:13 ニューオリンズスタイル
とめまぐるしく変わっていく。
その間、バックのミュージシャンの動きもよく見て、決してひとりよがりでない、コミュニケーションを大事にするようすが見て取れて好感が持てる。
そして圧巻のテクニック!
もうタメ息がでるのだ。