楽譜にない装飾音を入れるべきか
先生の前でバッハ パルティータ2番カプリッチョを弾くのはきょうが2回目。
前回に比べると、指がもつれて団子状態という箇所は少なく、全体的にまとまった出来だったと思う。
弾いた後、ややって先生は、
「装飾音がありませんね」
と言った。
ちなみに私が使用している楽譜は春秋社のもので、それによると左手に1か所装飾音があるのみである。
そして私がお手本代わりにしている實川風さんの演奏では、繰り返しのときにそこではない2か所に前打音があるだけで、あとは装飾音のたぐいはまったくない。
私はそれに倣ったのである。
しかし實川風さんの名をお手本として挙げるのははばかられたため(なんてったってテンポが違いすぎる)、
「繰り返しのときには、最初と〇〇小節目には入れようと思います」
と言ったのだ。
しかし先生は
「えーと、ここもいれられますよね、あそこも、ここも」
とトリルを入れられるところを列挙しだし、ご自分で弾きだしたのだ。
えーーーー! そんなん想定外なんだけど!!
トリルのカギは脱力
私はクラシックピアノでのトリルが苦手である。
これは多くのピアノ学習者と同じだと思う。
だってトリルが得意で、トリルがあると嬉しくて・・・というひとは聞いたことがないから。
苦手な理由はほぼほぼわかっている。
つまり完全な脱力ができていないため、鍵盤が上に上がり切っていないのに打鍵しようとして美しいコロコロ、という音にならないからだと思う。
コンクールは結果がすべてではない
それに私がトリルに挑戦したくない理由はもうひとつ。
私はあえて難しいことはしたくない怠惰な人間なのだ。
たとえば合格ラインが70点、というテストがあったとする。
ならば私は目指すのは71点でいいと思う。
70点稼げればいいのに、80点、90点を目指す勉強をするのは効率が悪いし、そんなのなんのトクにもならない。
だいたいふつう、合格点なんか発表されないではないか。
(しかしピアニストの経歴では「○○音大を首席で卒業」というのが多くないか?
ああいうのっていちいち発表されるものだろうか?)
私はちょっと小さな声で、
「あのぅ、本番ではできるだけボロがでないようにしたいんですけど・・・」
すると先生は、
「コンクールの結果だけがすべてではありませんからね。
バロックをやりたいんだったら、やはり装飾音は勉強しておいたほうがいいですよ」
と堂々正論。
しかし、私がタメ息をつきそうな風情であるのをみてか、最後には、
「おまかせします」
と言ってくれたのだが・・・
ポップスでのトリルは成功率100%
クラシックピアノでのトリルが苦手だ、と言ったが、それに反して私はポップスではトリルを入れるのが大好きである。
特にキラキラさせたいとき、ムードっぽい雰囲気をだしたいとき、ほかにアイデアがないとき。
例えば「ムーンリバー」なんかだと、
「ムーン リバー(トリル) ワーイダーザナ マイル(トリル)」
といくらでも入れられるぞ。
でも入れすぎるとあんまり品がよくないな、と思い直してもうやめよう、となったりする。
自分の意志でトリルを入れるときには、成功率100%なのに、決められたところで決められたように入れようとすると、成功率ががくんと落ちるのはどうしてなんだろう?
これはやっぱり人間、自分の意志で動くときと、義務で動くときとでは脳の回路が違うとしか思えない。
この話をすると、先生も
「遊びでは楽しいことも、仕事となればイヤになるのと似ていますね」
と笑った。
そうかな?
私の場合、クラシックもポップスも遊びといっちゃ遊びなんだけど。