舞妓とレディーの切り離せない関係
この映画を観終わった後(長すぎてちょっと大変だった)、夫ちゃんが、
「タイトルは『舞妓はレディー』だけれども、舞妓とレディーは関係ないよね。
何でこんなタイトルなのかな?」
と言うので、
「『マイ・フェア・レディー』のパロディーじゃないの?」
と返した。
すると、彼は
「あっ! そうか!」
と即座に降参した。
何かといつも彼にはやり込められているけれど、今回のように私が一発で彼をやりこめたことはそうそうないので、内心大得意だった。
だって私は、オードリー・ヘプバーン主演の映画『マイ・フェア・レディー』は少なくとも4回は観ているから、挿入歌は3曲ぐらいは歌える、というか弾ける。
そして「舞妓はレディー」は「マイ・フェア・レディー」のパロディーだと思うゆえんは以下のとおり。
- 「田舎娘が京ことばを苦労して習得し、舞妓になる」というのと、「ロンドンの労働者階級の花売り娘が貴族として社交界にデビューする」という設定が似ている。
- 花売り娘のイライザがヒギンス教授に恋をするように、舞妓志願の小春も、言語学者の青年に恋をする。
- 「京都盆地に雨が降る」は、明らかに「スペインの雨は主に平野に降る」からきている。
京ことばではなく業界用語だと思うのだが
映画中、一人前の舞妓になるために、主人公の小春は京ことばの習得が必須科目として課せられるのだが、その鍵となる表現として、
- おおきに
- すんません
- おたのもうします
の3つを徹底的に教え込まれる。
これを見ていた夫ちゃんは、
「こないだ京都に行ったときは、観光客ばっかりだったから、こんな言葉は聞かなかったね」
と残念がった。
ちょっと待って!! と私はいいたい。
それは何も観光客のせいではないだろう??
私は神戸生まれの神戸育ちであるため、京都弁・大阪弁までは完璧に話せない。
しかし大学は京都まで4年間通ったし、そこには系列の幼・小・中・高校もあり、エスカレーター式に大学まで進学してきた生粋の京都人もいた。
しかし私は彼らが「おおきに」「すんません」「おたのうもうします」と言うのはもちろん、語尾に「~どす」とつけるのも聞いたことがない。
ああいうのは、花柳界というか、いわゆる業界用語ではないのか?
俳優さんたちはみな素晴らしい
この映画には脇役として富士純子、草刈民代、竹中直人、岸部一徳といった、そうそうたる俳優さんたちが出演している。
富士純子の和装での所作はまことに美しいし、草刈民代さんの踊りはさすがである。
主役の上白石萌音は、演技も歌も踊りも大健闘で、この役柄にピッタリである。
いってみたらNHKの朝ドラのヒロインと一緒なのだ。
むしろこのストーリー、素材ならば、朝ドラに使いまわしてもよかったのでは?
そして監督は「シコふんじゃった」「Shall we ダンス?」を撮った周防正行なのだ。
だから「舞妓はレディー」が面白くないわけはないのだが、正直なところ、それほど面白いとは思えなかった。
上映時間の135分はちょっと苦になるぐらい長かった。
すばらしいミュージカル映画を観たい!
面白くなかった原因は何か?
ミュージカル映画なのに音楽があまりに平凡だったからである。
そこには、心ときめくメロディーも、はっとするコード進行も、踊りだしたくなるリズムもなかった。
それでもナントカの音楽賞は受賞しているらしいけどね。
私の耳がおかしいのか?
その可能性はじゅうぶんにあるが、「マイ・フェア・レディー」の音楽のすばらしさと比べたら、月とスッポン、天と地ほどの差があると思う。
ああいう本当のミュージカルは日本映画では期待できないのか・・・