昔のピアニストの演奏スタイル
私のクラシックピアノの先生の恩師は、ピアニストでもあり、東京藝術大学のエライさんでもあるらしい。
御年は70代前半であられるとのこと。
先生は恩師をすごく尊敬されていて、いろいろと誉め言葉のオンパレードのうちに
「ピアノを弾いているとき、顔も上体も微動だにしない」
というのがあった。
何でも今の若いピアニストに比べて、昔からのピアニストは、背筋をしゃんと伸ばしたまま、表情ひとつ変えないひとが多いと言う。
私はクラシックピアニストについてそれほど知らないので、
「ヘェー そんなものかなぁ」
と思い、ではその逆の、表情豊かなピアニストにはどんなかたがいらっしゃるのだろう?と検索してみたら、ブレンデル氏と内田光子さんを例としたサイトがあった。
でも、待てよ?
ブレンデル氏はもう引退していて、御年93歳。
内田光子さんは現在も活躍しているが、御年75歳。
先生の恩師と同世代か、それよりも上だから、顔芸を得意とするか否かは年齢とか世代に関係がないように思える。
しかし統計をとったわけではないが、なんとなく、感覚的に若手ピアニストのほうがオーバーアクションの傾向があるように思うのだがどうだろう?
前かがみで悲壮感が漂う小林愛実さん
あれ?小林愛実さんってこんな弾き方をするかただっけ?
たまたま見つけた動画では、ベートーヴェンの「悲愴」を弾いていらっしゃるが、前かがみになりながら、鍵盤をにらみつけ、渾身の演奏である。
確かに「悲愴」をニコニコして弾くひとはいないと思うが、見ているわれわれも悲壮感で泣きたくなってくるね。
お目目が星になっている藤田真央さん
次は藤田真央さん。
↓の動画ではモーツァルトの長調を弾いているせいだろうが、前かがみになりながらも、楽しくて楽しくでしかたがない、という雰囲気が伝わってくる。
まんまるに見開いたオメメは少年のようで、まるで夏休みの昆虫採集に行ったら特大のカブトムシを見つけた!ともいいたげ。
お口は半開きになっているから、口呼吸なのか?
あ、冬場はよくないよ、口呼吸は。
だって喉から風邪をひくからね、とよけいなお世話を言いたくなってくる。
横に揺れ後ろにのけぞるランラン
次はクラシックピアノ界の絶対王者、ランラン。
このかたは前にかがみこむよりも、横に揺れる動作が多いように思う。
そして表情は、何か年代物のワインを、「こりゃ、うめぇ~~」と味わっているように恍惚とし、姿勢はうしろにのけぞっている。
そして右手のトレモロが続く小節のあいだ、左手を大きく横にひろげている(1:12)
このジェスチャーは何を意味するのだろう?
私が見たいのはピアニストの顔芸ではない
こう見ると、恍惚とした表情と一口にいってもピアニストによって違うし、ピアニストも弾く曲によって表情は変わるのだろう、当然。
そうすると一般の聴衆はころころ変わる表情を見て楽しむ、ということもできるのだ。
反してオーバーアクションはいらない、顔芸も不要という聴衆もいるだろう。
これはもう好き好きなのでしかたがない。
ただ私はコンサートにたびたび行ける身ではないし、行けたとしても表情まで見えるような席がとれることはまずないから、演奏はYouTubeかテレビで見るしかない。
そうした場合、カメラがピアニストの表情を写すととてもガッカリする。
私が見たいのは、手、指、指使いなのだ!
ピアニストの顔なんか、どうでもいいよ、正直なところ!