夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

故意かミスタッチか?サンソン・フランソワの不思議な音

サンソン・フランソワ(1924-1970)

ラン・ランで聴くドビュッシー「夢想」

ただいまレッスン中のドビュッシー「夢想」の参考とするため、いろいろなピアニストの演奏をYouTubeで聴いている。

まず検索で一番にあがってくるのはラン・ラン

それはそうでしょ。

現在、クラシック界を代表するアーティストなんだから。

彼はよほどドビュッシーの「夢想」が好きらしい。

彼の編集による「ピアノブック」にもこの曲がはいっているし、パリ/ノートルダム大聖堂でのコンサートでも弾いたのを記憶している。

それを改めて動画で聴いて見ると、テンポはちょっと遅すぎるのではないかと思うほど。

一音入魂で全身全霊を賭けての演奏。

でもね、私はなぜか彼に限らず、ピアニストから恍惚とした表情を見せられると、なんか恥ずかしいのだ。

それで、なんかもうちょっとクールな演奏はないかなぁ、と思って探し続けている。

www.youtube.com

そこで思いついたのが、サンソン・フランソワの演奏だ。

ひと昔前なら、ドビュッシーラヴェルなどフランス近代音楽家の作品ならみな、彼の演奏に倣ったのではないだろうか。

ontomo-mag.com

サンソン・フランソワの「夢想」に現れる?な音

そこで彼の「夢想」を聴いて見たのだが、途中「あれれ?」と思うところに遭遇した。

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問題の箇所は47小節目の左手トップノートである。

楽譜上はミーレドシーなのだが、なぜかサンソン・フランソワは♭ミーレドシーと

弾いているのだ。

一体全体どうして?

もちろん聴いた人も気がついていて、YouTubeのコメントには

Woah some honkers of wrong notes in there!

(ミスタッチが何か所かあるぞ!)

とか

mais que viens faire ce mi bémol à 1' 35?

(1分35秒で♭ミなんてどうしてでしょう?)

というコメントもある。

それに対して秀逸な返信は

pour y mettre une touch jazzy , sûrement

(きっとジャズっぽい音をいれたかったんでしょう)

というのがあった。

これは気の利いた、好意的なコメントだと思う。

サンソン・フランソワの不思議な音をめぐる想像

どうしてサンソン・フランソワドビュッシーが書いた音と違う音でレコーディングしたのか?

「間違えました、えらいこっちゃ!」では多分ないだろう。

当時としても録音の撮り直しぐらいはできただろうから。

私が想像するに、彼は大変なアルコール好きだったから、酔っぱらって弾いていたのかもしれない。

そして「あ、ちょっと指が滑った」と思ったが、あとで録音を聴いて見ると、ジャズっぽくて彼の好みだったので(彼のジャズ好きはことに知られている)、そのままそれを残すことにした・・・は、あくまで想像である。

他のピアニストなら私だって、

「そんないいかげんな!」

と怒ったかもしれない。

でも彼ならいいのだ。

だってサンソン・フランソワは、後年ちょっとぶよぶよしてしまったが、もともと水もしたたるいい男だし、今風に言えば、ちょいわるオヤジ風でもある。

下の動画では、感情にまかせて即興でピアノを弾いているが、「男は黙ってピアノを弾く」みたいなCMに使えそうな風情もある。

ちょっとこの色気はランランにはないでしょう。

はぁ~ カッコいい。

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