柔道着の帯の色から思い出したこと
きょう神戸新聞オンラインの記事を読んでいたら、フランスに柔道をひろめ、「フランス柔道の父」と言われる川石酒造之助(かわいしみきのすけ)が兵庫県姫路市出身であることを知った。
彼についてもっと詳しく知りたいと思ったが、あいにく無料版ではごく一部しか読めないのだ。
悔しいのでネットでいろいろ調べてみると、川石氏は柔道がフランス人に受けいれられるためにさまざまな工夫を凝らし、そのひとつに柔道着の帯の色があると言う。
つまり帯の色を7つに分け、初心者は白、そして段があがるごとに、黄色、オレンジ、緑、ブルー、茶、黒と締める帯の色が替わるのだそうだ。
このカワイシメソッドが合理的なフランス人の考え方に通じるものがあり、フランスで柔道が人気のスポーツになる要因にもなったという。
でも私は思った。
「昔あった全音の楽譜の帯といっしょやん」
だから格別画期的なものとは思えないのだが?
昔の全音には色帯が巻かれていた
いつごろまでかはわからないのだが、私が子どもの頃の全音の楽譜には、レベルによって違った色帯が巻かれていた。
といっても、初級=赤 中級=黄 上級=青、とまことにざっくりとしたものだったが。
それでも初級の赤帯から始めた子どもにとっては、黄帯に進んだときの嬉しさはひとしおであり、これからも精進して青帯に進まん、とヤル気まんまんだったことをきのうのことのように覚えている。
しかし・・・
昔の中高生もけっこう忙しかったのだ。
お稽古事より部活を優先することになり(塾はまだ一般的でなかった)、私が青帯に進むことはついぞなかったのである。
半世紀前の全音の学習体系
それで当時はどんな曲集に青帯が巻かれていたのかというと。
なんと標準教材としてはショパンエチュードしか挙げられていないのだ。
併用曲集として、ベートーヴェンのソナタ2とか、ショパンバラードとか、リストのハンガリア狂詩曲などが掲載されているが、子どもだった私には、それらがどれほど難しいのか全然わかっていなかった。
ただ、ピアノを続けていさえすれば、青帯の楽譜を持ってレッスンに行く日が遠からずくるのだ、と信じて疑わなかった。
なんと考えの幼いことよ。
あ、それから「ショパンワルツ集」といって、ショパンのワルツばかり17曲はいった曲集が当時はたったの350円だったのだ。
今の4分の1の値段ということか。
現在の全音の学習体系
それでは現在の全音の学習体系とやらをみてみよう。
ショパンエチュードはあいからわず最難関のランクに鎮座しているが、そればかりではなく、上級課程にランクされる作品の作曲家としてスカルラッティ、プロコフィエフ、ハチャトリアンなど、昔にはなかった作曲家名も見える。
さすがに半世紀もたつと、楽譜のバラエティーもずっと豊富になったのだなぁと感慨深い。
それも全音だけでこれだから、他社の出版、輸入楽譜もあわせると、ヤル気さえあればどんな曲だって弾けそうだ。
ヤル気さえあれば。
難しい曲で好きなのがない悩み
ところが大人になると、というより老境になると、ひたすら難しい曲を目指して頑張る必要はまったくないなぁと気づいてきた。
これをひとは負け惜しみと呼ぶのかもしれないが。
なぜなら私の好みは変遷し、今やショパンエチュードのなかで気に入ってぜひ弾いてみたいという曲はないし、お気に入りのはずのドビュッシーも後期の作品は全然ピンとこないのだ。
どっかにぐっとくる曲はないかなぁ。
その欠如感を補填するために、私はジャズやポップスを弾いているのだろう、たぶん。